でも不思議なことに

じゃにーずのこととかそれ以外のこととか

ボクの穴、彼の穴。を観た話

「戦争の話」って聞いていたから、てっきり『穴』っていうのは銃口のことかと思っていたんだけど、穴はもっと大きくて自分をすっぽりと、空から隠してしまうような穴だった。

 

あらすじは、砂漠に兵士として送り込まれた一人と一人が穴の向こうの『モンスター』にどうやって立ち向かうかという話。戦争の話。

  

塚ちゃん演じる兵士は独り言がとにかく明るい。誰も聞いていない独り言が慣れてる感じがしてそれがまた切ない。でもその慣れている感じも「本当はそうやって自分自身に言い聞かせてきたのかなとも思うんです。」って演じてる塚ちゃんは感じてる。そしてそんな彼のことを「大人になって、あきらめちゃったのかな?」っていう言葉を選ぶのがああ塚ちゃんだなあって。のちのページでも「生まれた時からの悪人はいないからね。」って断言する塚ちゃんがいろんな人との出会いをかけがえのないことだと話してることがすごくぐっときたなあ。

劇中で「ハブられたこともないくせに!!」って声を荒げる塚ちゃんの言葉がどうしてか私にはずしっときて、メンバーの中でちょっと異質というか、もっと塚ちゃんのこと大事にして!って外から見てる私は思うことがあるから余計に。だからそんな塚ちゃんがこの言葉を発した時になんか勝手にしゅんとした。いや本人は全然気にしてないかもしれないんだけどね!?とにかくもっとみんな塚ちゃんにやさしくして!!五関くんは塚ちゃんのこと無視しないで!!!閑話休題。そんな一人に慣れてる塚ちゃんは穴の中でことあるごとに歌を歌う。感情とか抑揚のない一本調子の歌を歌う。それが穴の中から見上げた星空に歌う歌はとても優しくて静かでちょっとだけ泣きそうになる。塚ちゃんの高音は星空の瞬きみたいだった、高くのぼる声に不思議と上を向きたくなるような声。それが見えない「モンスター」の声と重なって二人の背景が真っ青な青空になるんだよ~舞台が唯一明るい色に染まるのが、二人の歌声が重なった瞬間っていうのがすごくよかった。よかったんだよ…!(語彙力)

あとは29歳の塚ちゃんが24歳役で24歳の秀くんが26歳役というパンフレットにもどこにも書いてない年齢設定が舞台上であかされるんだけど、自分はどっちも10代だと思ってたからちょっと驚き。塚ちゃんがすごく純粋でまっすぐでこんな20代いるかーーい!と思ったんだけど、人からハブられたりいじめられたりってことを経験してもなおこの純度をもって戦場に立つ塚ちゃんの底知れなさは塚ちゃんそのもののもつ芯の強さなのかな~なんて思ったり。それを形成してるのがかつてお母さんに怒られた「人の話を聞かない」ところなのかもしれないし、今塚ちゃんが大事にしている「人の話を聞く」ところなのかもしれないし、きっと無意識に上手に使い分けてるんだろうなあと思う。取捨選択、というか「捨」が上手そうな塚ちゃん。

ファンが身近にいるように感じるのは、塚ちゃんがそうして人との出会いを大切にしていることがこちらにも伝わってくるしその開いてくれてる門がとてもあたたかいものだからだよって機会があったら伝えたい。それにしても「こんにちは」「こんにちは」って…そんなの笑ってしまうじゃないか…すきだ…。

 

 

秀くん演じる兵士は、きっと人の中心にいたんだろうなっていうのが仕草や話し方からにじみ出てる兵士。独り言もどこか誰かに話しかけているような、それは自分自身であったりここにはいない誰かであったり、人がいることが前提な気がした。そこが結局最後の塚ちゃんの君と僕は同じじゃない(ニュアンス)発言につながってくる気がする。

マイケルのことを何度も何度も呼ぶんだよね、相棒が返事してくれないって何度も呼んで分かってるはずなのにそれでも呼んじゃう。マイケルロウザボーターショー。死んだ相棒の名前を呼んでるはずなのに、歌い続けると最後はハレルヤって言っちゃうのが不思議で滑稽でより切なくなる。正義感ってまっすぐいけばいいけど行かないことのほうがほどんどで、あれ?まっすぐきたはずなのになんでだろうなって泣きながら笑っちゃうあの感じが秀くんにはあった。

あとはトカゲを必死に追いかける姿がね!もうめっちゃ必死!!最後しっぽしかつかめなくておいおい嘆いてたはずなのにふと我に返ったように敵にトカゲを食べるようなやつだと思われちゃいかん的なそこプライドまだ必要なんだ!?って思わず笑った。ここもまたほっぺに飛んできた虫を叩いておもむろに口に運んでた塚兵とはちょっと違うところ。

  

好きな場面はいっちばん最初のシーン。暗転して照明がついて砂漠の上に一人ぽつんとたたずむ塚ちゃんと、会場いっぱいに入ってる人みんながじっと息をひそめて空気が動いてないって自分の肌から感じたあの瞬間、きっと忘れないと思う。その場面が鮮明に思い出せなくなっても、あの会場中に満ちていた空気の感触は忘れない。そのくらい塚ちゃんが一瞬にして空気を変えた瞬間は強烈だった。こりゃすごいものに立ち会うのかもしれない、浅く上下する心臓を服の下に感じながらそう思ったんだよ。

あとは穴の底でひたすら待つ塚ちゃん。のけぞるように空を見上げるときに白目がつやりと光ってきれいだったなあ。砂漠でガラスの破片が光るような一瞬の光。銃を秀くんに突きつける瞬間もつやりと白目が光っていたなあ。白に近い髪の毛、カーキの服、真っ黒な黒目、真っ白な白目。すごくきれいだった。

 

 

最後の挨拶のときに、\ありがとうございマッスル/ってステージ上でマッスルポーズする二人の笑顔がふんわりやわらかくてこの二人が役を包んだ「ノイズ」はすごく気持ちよかったな~とほっこりしたのでした。垣間見えたしっかりものの年下の秀くんとちょっと抜けてる年上の塚ちゃんはとってもかわいかった~!

 

 

塚ちゃんって演技の時と普段のバラエティーの時が全然違うんだよなあ、っていうのは「イットランズインザファミリー」の時も感じたことで、外身はもちろん塚ちゃんだしうっすら塚ちゃんの性格が見え隠れするようなところもあるんだけど(これは演じている役の設定っていうのもある)、中身は違う人だって感覚が受け入れる感じがする。卵の殻と膜は塚ちゃんなんだけど黄身は全然違うなにか…っていうのかな…。役を自分に練りこむわけでも、役を自分で操るわけでもない、役に体を明け渡してるっていうのが一番しっくりくる。そこに自分の要素は必要なくて、こういう人がいるっていう事実だけが塚ちゃんの中にある。ここでふとこの間のちゃんずーですぐに赤ちゃんの心境になった塚ちゃんのことを思い出すなど。だから演技の中に普段の塚ちゃんが全然見えないのが新鮮なんだよ~テレビで見てる「塚ちゃん」じゃない中身になるとこんなにもまっさらで簡素な入れ物なんだなってことがわかって、普段の塚ちゃんがこうありたいと思う塚ちゃんがどれだけ濃くて愛しいものか~!

塚ちゃんは人の話聞かないし社会不適合者@ちゃんずーだけど小さいころに習った当たり前のことが当たり前に塚ちゃんの中にある、気がする。なんかそれって生きてるうちにちょっとずつ弱まってねじれてく力な気がするんだけどきっと塚ちゃんはその最初に学んだ当たり前がずっとそのまま丁寧に手入れされて塚ちゃんの中にある、気がする。都合がいい言葉だなあ、気がする。近くにいたら絶対大変だろうなと思うけど私はアイドル塚ちゃんがすごくすきだし尊敬する。これは断言する!二人芝居すごくよかった!もっと外部のお芝居観たいよ塚ちゃん!! 

 

90分っていう短い時間だったし原作は絵本だからそんなに難しいことは言ってない、戦争だって体験したことがないから過去を振り返って自分を懐かしむわけでもない、だけど自分もかつて感じたことがある「戦争」もあった気がするって思う。小学校だったかもしれないし最近のことかもしれない、集団と集団の中の個がぶつかって相手が悪いんだと思って決めつけていたことがなかったかな?って穴の上から二つの穴を覗き込む自分が問いかけてくる。あったな~そんなことあったわ、って思う。

せーの、でやめられることばかりではないと思うけど、僕たちからまずやめてみようって言った塚ちゃんの笑顔がすごくかわいかったなあなんてそんなことを考えるだけでも私の心は平和になる気がするので、その平和をおすそ分けするように相手の穴を覗き込めるようになったらいいなあと思うのでした。